軍艦島の遺産―風化する近代日本の象徴

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軍艦島の遺産―風化する近代日本の象徴 (長崎新聞新書 (015)) 軍艦島の遺産―風化する近代日本の象徴 (長崎新聞新書 (015))
後藤 惠之輔

長崎新聞社 2005-04
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この本では、そんな端島の“基礎知識”はもちろん、端島が“軍艦島”と呼ばれるようになった経緯や、他の文献ではあまり触れられていない、炭坑事業や、社会学、都市工学的見地からの解説などもあって、とかく情緒的に語られがちな、端島を多面的に捉えることができる。

著者の一人は端島に暮らした経験があり、そこでの光景がいきいきと描かれ、とても興味深いエピソードが述べられている。

とても小さな島で多くの人たちが暮らすのだから、さまざまな苦労があったことは想像に難くない。生活物資はもちろん、水の調達は大変だったようだ。また、外界に孤立した島であることから、船が着岸すること自体にも大変苦労し、船の乗り降りは相当の危険を伴う作業だったらしい。

島にはあらゆる機能が揃っていて、島自体が“街”そのものだった。そして家賃や光熱費は会社持ちで、いくら不自由のない暮らしができる島でも、使い道は限られていたから、意外なほど…と言っては失礼だが、かなり贅沢な暮らしをしていたようだ。皮肉にも島で産出されるエネルギーである石炭とは無縁の、最先端の電化製品に囲まれた生活をしていた…と聞くと、どこか複雑な思いがする。

とにかくあらゆるものがコンクリートで固められ、狭い島を有効に使うために立体化されていたため、階段だらけだったようだ。いまのようにエレベータやエスカレータもないため、昨今のバリアフリーとは無縁に見える。

しかし、建物と建物は“空中廊下”で接続され、建物間は最短距離で移動できるようになっていたり、階段の段差を小さく緩くすることで移動の負担が掛からないように工夫されていたようだ。そして、なにより、人々の支え合いが、紛れもなくバリアフリーそのものだったのかもしれない。

Posted by ろん