2579 箱根ラリック美術館
箱根ラリック美術館を訪問。
東京庭園美術館にて |
そもそも“ルネ・ラリック”という人物を初めて知ったのは、東京庭園美術館で見た大きなガラスのレリーフが、彼の作品であったことだった。東京庭園美術館は、旧皇族の朝香宮邸だった建物で、アールデコの特徴をよく現しているといわれている。
美術館のパンフレットにはこんなことが書かれている。
アール・ヌーヴォーとアール・デコの時代を駆け抜けた宝飾とガラス工芸作家、ルネ・ラリック。
見学するまで、実は「アール・ヌーヴォー」と「アール・デコ」の違いが曖昧なままよくわかっていなかった。しかし作品をじっくりと見学している間に、少しずつ違いが分かるようになってきた。
「アール・ヌーヴォー」は、植物のつるなどをモチーフとした有機的なうねるような曲線を主体としたデザインの傾向のことだそうで、1900年代前半に流行する。一方「アール・デコ」は、幾何学的なデザインで、反復したり直線を多用しているのが特徴で、1930年前後に流行した。
宝飾品を見る目がなく、うまい感想が言えないのだけれど、こうしてデザインの傾向を踏まえた上で、作品の変遷を辿るのは、とても興味深い体験だった。
そして、この箱根ラリック美術館で、最も重要な展示品のひとつ、オリエント急行で実際に使用されていたサロンカーを見学する。このサロンカーを見学するためには、入館料とは別になんと2,100円!が必要なのだ。見学と解説と合わせて、洋菓子と飲み物がセットになっているとはいうものの、ためらってしまう金額ではある。
サロンカー内部も美術館の一部ということで撮影不可なのは残念。でも、車両だけは撮影可だったので、ダミーとともに…。
オリエント急行のサロンカー…ダミーとともに |
どのように見えるかを計算し尽くしたラリックのレリーフは素晴らしいの一言に尽きる。他に比べる対象を思いつかないくらいだった。
車内にあった椅子は、かなり重厚な作りで、車両の中に置く調度品だからといった妥協が一切ない気がした。解説によれば、この椅子は出入口のドアから入らないほどの大きさがあるため、部品の状態で搬入し、車内で椅子職人が組み立てたのだという。とんでもない気合いの入り方だ。
これほどの状態の良さで保管されている車両は世界でもあまり例がないそうだ。2,100円は高いと思ったが、こうしてある程度、あえて敷居を上げておくことで、作品として劣化させずにとどめておくことができると考えたら、やむを得ないのかな?なんていう気もした。