2513 園児の涙から見えた大人の狡賢さ

物思いに耽る(雑感),社会・政治・事件

道路建設予定地に作られた保育園の畑が、大阪府の強制代執行によって撤去されたという。ニュースではこんな感じで伝えられた。

 保育園の職員や保護者らは「子供たちが育てたお野菜です」などと記されたプラカードを掲げ「子供たちの野菜を奪う権利が橋下知事にあるのか」と声をあげ、あたりは一時騒然となったが、府は周囲をフェンスで囲い、敷地内を立ち入り禁止とする措置を取った。野菜畑には登園前の園児も立ち寄っていたが刈り取られた野菜を前に涙ぐむ場面も見られた。

このニュースのポイントは、「大阪府の強硬な態度に疑問を持つ」ということが一般的な見方かもしれない。子どもたちの気持ちを踏みにじるなんて許せない…なんていう声もあるだろう。記事のタイトルからも、そうした思いを感じてもらおうという意図がありありと見える。

しかし僕には、大阪府の態度よりも、この保育園の態度の方がよほど問題に思う。

まず一番最初に思ったのは、なぜこういった強制代執行が行われている場所に園児たちがいたのか?ということだ。園児たちが取り囲めば、強制代執行が取りやめになるとでも思ったのだろうか? さらに泣いてくれれば、マスコミにとって“いい絵”になるはずで、それが取り上げられれば、自分たちの交渉に有利に働くと考えたとしか思えない。園児たちを利用しようとした大人たちの“狡賢さ”を感じずにはいられなかった。

記事によれば5年前から用地買収交渉が始まっていて、それを保育園ずっと拒否し続けてきた。そんな問題のある場所に畑を作ってきたのだ。そして園児たちには、この畑がどういった状況に置かれているかなんて知るわけがなく、今回の強制代執行は、単純に自分たちが心を込めて作ってきた畑を壊しに来たという風にしか見えないわけで、そりゃ涙も出るだろう。トラウマにだってなるかもしれない。

そして、もっとも気になったのは、先述のような「子どもたちの気持ちを踏みにじるなんて…」と、このニュースを読んで憤った人たちが結構いるとということだった。この記事のことを書いたブログを読むと、「許せない」とか、「橋下知事ひどい」とか、「辞めろ」といった意見が少なくない。

そんな“単純な反応に軽い戸惑いを覚える。

保育園の目論見は当たったのかもしれないが、どうも腑に落ちない。いろいろ考えさせられる。

Posted by ろん