2504 魔法の粉

科学

かつては、どんなときにもテレビをつけていた“テレビっ子”だったのに、いまではビデオで録画したドラマか報道情報番組くらいしか、テレビを見ることがなくなった。

日曜日の夜、珍しくテレビを見ていた。「近未来×予測テレビ ジキル&ハイド」という番組のオープニングで、こんなことを言っていた。

事故によって切断した指がまた生えた!この奇跡を起こした、ふりかけるだけで傷が治るという“魔法の粉”の正体とは?

「またまた、どうせインチキな話なんだろう?」と思いながらも、引き続き番組を見続けた。確かに失われたはずの指が元に戻っている。爪の部分も完全に元通りだし、もちろん傷口などまったくない。しかもわずか4週間という早さで…だ。どう考えても信じられなかった。そもそも“魔法の粉”をふりかけただけっていうのが怪しい。

その“魔法の粉”とは、豚のぼうこうから作られたという「細胞外マトリックス」というものだった。番組サイトから引用 (キャッシュ)させてもらうと…

細胞外マトリックスとは、細胞を包み込む繊維のようなもの。
細胞をコントロールし、その増殖を促す働きを持っている。
では、この細胞外マトリックスの粉は、どのように指を再生させたのか?
そもそも、人がケガをすると、出血などを防ぐためにその傷口に血小板などが集結し、急場しのぎで傷を治そうとする。その結果、本来あるべき細胞や組織が作られないまま、傷の表面が覆われてしまう。これによって、傷跡が残ったり、失われた部分はそのままになってしまうという。
しかし、細胞外マトリックスをつけると、骨や皮膚などを作るのに必要な細胞が、体内から呼び寄せられ、増殖。これにより指が再生されたのだ。

こんなことができるなんて初めて知った。理屈の上からは正しくても、にわかには信じられない。なぜ失われた組織が完璧に元に戻るのだろうか?、まるで意志を持っているかのように。

しかし、現実に怪我が治っている人がいるというのも事実だ。これは本当にすごいことかもしれない。

今回のような怪我で組織を失ったようなケースばかりでなく、病気になった組織を意図的に取り除き、細胞外マトリックスで、組織を再生させれば、自分自身の力で元に戻ることができるのだ。

自分自身の細胞で再生するわけだから、臓器移植で発生する拒絶反応はあり得ず安全。しかも組織が再生される期間が非常に短いから入院期間は短縮できるし、なにより身体への負担が軽い。そして極めつけは、料が豚のぼうこうということであれば、安価に作ることができるということだ。

テレビでも紹介していたが、たとえば絆創膏にこの技術が使われていたれば、これまでの常識では考えられないくらいの早さで、傷をまったく残さずに怪我が治るようになるかもしれない。

“魔法の粉”なんて、いかにもうさんくさく感じてしまったが、ここまで見るとまさに“魔法の粉”としかいいようがない。期待は否応なしに高まってくる。

しかし、これほどまでに完璧だと、かえって不安になってくるのも事実。本当に細胞外マトリックスによる再生医療に死角はないのか? 今後の研究に注目していきたい。

Posted by ろん