2492 ハクビシン
1ヶ月ほど前のこと。
一日の仕事が終わり、自宅最寄り駅から自転車で自宅に帰る途中、遠くからなにか視線を感じた。
よく見ると遠くになにやら黒い動物らしき動くものが。
「猫?」
と思ってよく見ているうちに、こちらの方に近づいてきて、そのまま僕の数メートルほど前の方を走り去っていった。
猫にしてはちょっと身体が長いというか、あまり見慣れないような姿形だった。鼻筋が通っていて、尻尾の長さが印象的だった?
「もしかしてタヌキ?」
自信がなかったが、少なくとも普段見慣れたような動物ではないことは間違いなかった。自分の知っている動物で一番近いのがタヌキだったに過ぎないというだけだった。
翌日、あらためてこの動物の形を思い出しながら、調べてみたら、ハクビシンだったことがわかった。さらに調べてみると、害獣として扱われていることも多いようだが、その一方、そもそもこのハクビシンは日本の固有種かそれとも外来種であるかどうかすらわかっていないらしい。
それから、ハクビシンのことはしばらく忘れていたのだが、朝、駅に向かう途中、警察官が、網に入った動物を苦労しながら運んでいる光景を目撃した。
すぐにピンと来た。きっとあのハクビシンだと。
ハクビシンは、ただでさえ重くて運びにくいのに、網の中でときどき抵抗を繰り返し、警察官を困らせていた。
「大変ですね」
と声を掛けると「もう大変だよ…」と、弱り切った声で答えてくれた。聞けば、川の下にいたところをレスキュー隊によって“救助”されたものの、110番通報があったという理由?から、まず警察で引き取るということになったらしい。
もうちょっと様子を見てみたかったが、「ハクビシンを見てて遅刻した」と言うのも変なので、後ろ髪を引かれる思いで、その場をあとにした。
野生動物が都会に出てきてしまったら、人間との共存せざるを得ないのは仕方がないと思うけど、このハクビシンの将来のことを考えるとちょっともの悲しくなった。
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