阪急電車/有川 弘

■文学・評論, 龍的図書館

4344014502阪急電車
有川 浩

幻冬舎 2008-01
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電車で移動するということは、目的地に着くまでの間、一緒に乗り合わせた何十人、何百人と、同じ時間を共有するということだ。

目に映る人たちは、一種の風景にしか見えていなかったが、考えてみれば、そんな一緒に乗り合わせた人たちには、当然それぞれの人生がある。

大げさだけれど、電車という限られた空間で、人生の一部を共有しているとも言える。

電車の中では、ほんのちょっとしたことがきっかけで、人生と人生が交わることが起きる可能性があるのだ。

この本のタイトルだけ見ると、阪急の鉄道車両やダイヤ、歴史どが書かれた、趣味の本?といった感じがするが、そうではなくて、兵庫県の西宮西口駅から宝塚駅を結ぶ、阪急今津線の中で起きたことがきっかけに起きたドラマを描いた短編小説集だ。章立ては8駅(話)に分かれている。

もっとも、殺人事件のような大事件が起きる訳ではなく、電車内で起きるありがちな、ごくごく小さな出来事の積み重ね…といった感じ。

この本でもっともユニークな点は、電車が一駅ごとに進んでいく間、主人公がどんどん変わっていくということ。そして、それぞれの話がちょっとずつ重なり合っている。さっき出てきた話が影響しあっている。

実際の人生も、まさにそういうものなのかな…なんて思えた。

小説の中での登場人物が「他人に声を掛けすぎ?」という気もしたが、人生のドラマなんて、ほんのちょっとしたきっかけで始まるのかもしれない。ときには、軽い気持ちで話しかけてもいいような気がした。

前半で往路の8駅(話)のあと、後半は時間をおいて復路の8駅(話)と続く。読みやすくて一気に読んだ。さらにまた“往復”して、登場した主人公たちの今後を読んでみたいと思ったし、主人公以外の人たちのサイドストーリーとか、阪急今津線以外の路線はどうだろう…とか、いろいろ想像がふくらんだ。