童話のつくり方/木村 裕一

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4061497081 童話のつくり方 (講談社現代新書)
木村 裕一

講談社 2004-03-21
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何気なく手にした、この本のまえがきにはびっくりした。

童話作家ほどオイシイ商売はナイ

あらゆる職業の中でも子供の本の作家ほどおいしいものはない。(中略)
紙にちょっと字を書くだけで、それも夢があっていいなと言われて、さらに当たればずっとお金になる。それが童話作家。(中略)
犠牲になるものがなくて、無理せず続けられて、当たればでかくて、長く続く。こんなにいい商売はない。

ベストセラー童話を書いた人のこれまどまでに“生々しい”考えを聞いたのは初めてだ。これまで想像してきた、童話作家のイメージが音を立てて崩れ去るような気がした。(かなり大げさだけど)

童話作家というもののイメージが変わったものの、童話を作るということが、どういう作業であるのかということが、大変具体的に説明がなされているので、童話ばかりではなく、何かを創造しようとするときの参考になりそうなことも多く書かれていた。とにかく書き始めること、気が付いたテーマやネタはすぐにメモすることが大事というのは、あらゆることにつながる。

童話を作るに当たって意識しておきたいことがいくつも載っている。気になったのを挙げてみると…

  • 「理解させるのではなくて感じさせる、思わせる」
  • 「言葉でわかることと心で思うことは違う」
  • 「動物をイメージをあらかじめ備えた役者だと考える」
  • 構成は「起承承承転結」

童話だからといって、子供用と考えるのは早計だという。「見下した感じ」「子供用だと甘く見ている感じ」に、子供は敏感なのだ。確かに自分が子供だったころ、「子供扱いされている」という感覚はよく覚えている。子供っていうのは、体重が半分、年齢が半分でも、人間が半分という訳ではない。一人の人間としての要素はみんな持っている。

「本物のステーキを子供の口に合うように小さく切ってあげるようなもの」という著者の表現は、とてもわかりやすい。

この作者を知ったのは、ベストセラー「あらしのよるに」という童話だったが、これには、著者の童話に対するさまざまな実験がちりばめられていたのだという。結果的に、それが“当たった”ということなのだろうが、それに“踊らされてしまった”感は否めず、すこし複雑な気持ちになった。

でも、これまでにない視点で書かれた本なので、とても興味深く楽しく読むことができた。