最終工場/小林 伸一郎

■建築・都市,龍的図書館

4838717806 最終工場 (JAPAN DEATHTOPIA SERIES)
小林 伸一郎

マガジンハウス 2007-09-20
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僕がまだ子どもだった頃からなぜか廃墟には心惹かれる。
もちろん“冒険”という子どもらしい?気持ちもあったが、それとは別になんとも言えない廃墟から感じる空気というか、廃墟に流れる独特の時間というのもを感じていたような気がする。

世の中に最初から廃墟だったところなど存在するはずはない。その建物や工場ができたばかりの頃は、なにもかもが真新しく、おそらくは活気のある光景が広がっていたことだろう。多くの人たちが集って賑やかだったはずだ。

時代を経て人が去り、抜け殻のように建物が遺される。かつてはどんな様子だったんだろう? そこで使われていた工具も整理されたまま残されている。最後に触れたのはいつなんだろう? 

廃墟を見ると、ふだん使わないような想像力をかき立てられる。
本書は日本中から集められた廃墟をとらえた191点の写真集だ。こうした廃墟に関心がある人が見たら、ここからさまざまなイメージを感じ取ることができるだろう。僕が最も感じたのは「美しさ」だった。

美しさというものは、「美しくしよう」とあえて意図せずとも、期せずして「美」を感じさせることがある。その代表的な例が“自然”だ。自然は、自ら美しくなろうと意識しているはずはないのに、人はそれを「美しい」と感じる。

この写真集に載っている廃墟は、自然と同じような「美」を感じた。