青色讃歌/丹下 健太
青色讃歌 丹下 健太 河出書房新社 2007-11-16 |
第44回文藝賞を受賞した作品。
同棲中の彼女めぐみに生活を依存した、ヒモ同然の主人公高橋。彼がフリーター生活から抜け出すために職探しをするが、あまり危機感がないせいか、就職の見通しがまったく立たない。そんな彼に課せられた課題は、暇な時間があるんだったら、逃げ出した猫を探してきてという彼女からの頼みだった。
猫探しの過程で、さまざまな人たちに出会う。見どころはそのあたりか?
章立てはおろか目次も巻末の解説もなく、話は淡々と進んでいく。ある日突然見ず知らずの主人公に乗り移って世界を眺めているような、そんな錯覚を覚えた不思議な小説だった。書評を見るまで気付かなかったが、主人公以外の心の内面描写が出てこないというのだ。それでいて一人称の小説ではなく、三人称を用いているため、独特の雰囲気になっていたのかもしれない。
かなりのユルさが全編に漂っている独特の世界に対する評価は分かれそうだ。僕は、それなりにおもしろかったとは思うが、どこか物足りなさみたいなものも感じてしまったのも事実。