2354 国立西洋美術館「ムンク展」

芸術・デザイン

国立西洋美術館で開催されている「ムンク展」に行ってきた。
ムンクと言えば、「叫び」は、あまりに有名で、一昨年ノルウェーに行ったときにも、わざわざオスロ国立美術館で「叫び」を見学しに行ったくらいだ。

今日もほとんど予備知識もないままやってきてしまった。それに、もともと僕は絵画鑑賞自体、どうも見るポイントがわからないので、音声ガイド(¥500)を借りてみることにした。

開催期間が明後日(2008年1月6日)ということもあってか、まだ午前中だというのに、展示室内は、かなりの混雑。

数々の作品とともに習作や下絵なども多数展示され、絵というものが、突然現れるわけではなく、何度も何度も試行錯誤しながら作られていることがよくわかる。時を経て再びモチーフとして登場したり、複数の作品の作風が合わさったりしているようすがよくわかった。ふだん美術館などで鑑賞できる作品は、作家の試行錯誤のごく一部の切り取られた瞬間に過ぎないのだ。

ムンクの場合、「叫び」のインパクトがあまりに強いために、僕の思考はそこで止まっていたように思える。僕と同じような人が大勢いたとしたら、それはムンクにとっては本意ではなかっただろう。

彼は装飾画家であることにある種のこだわりがあったようだ。ここでいう装飾とは、講堂や部屋などの壁を飾ることということで、絵1枚ではなく何枚もの絵を使うことになる。個人の邸宅や、チョコレート工場の社員食堂、オスロ大学の講堂といった装飾を手掛けている。

ムンクのパトロンのひとりであるリンデから彼の子ども部屋に飾る絵の依頼を受ける。「風景画のような子どもにふさわしい作品」という要望だった。しかし、彼は何を思ったか、彼は夜の公園に取材に繰り出し、抱擁、接吻をする男女を観察。そこで暴漢に襲われたり、警察に連行されるなどのとんでもない目に遭う。そしてできあがった作品は、愛を交わす“熱い”男女の様子であった。それを見たリンデは、子ども部屋にふさわしくないと受取を拒否されてしまうのだ。

やはり「愛」・「生」・「性」・「死」・「不安」といった要素をキャンバスに表現する、画家ムンクとしてのこだわりがあったのだろうか?
(なにも子ども部屋用の壁画までこだわることもないような気もするけど・・・)

晩年、オスロ市庁舎の壁画制作に並々ならぬ意欲を示していたものの進行が遅れ、ようやく依頼が来たときには、すでに体力が衰え実現しなかった。「(自分が)若いときには見向きもしなかったくせに・・・」と言っていたとか。

混雑のためにあまりじっくり鑑賞できなかったが、それでもムンクという芸術家の一端を垣間見ることができた気がして満足だった。興味深いエピソードを教えてくれた音声ガイドに感謝。そして、そもそもこの企画展のチケットをオークションで見つけてくれたおじゃこにも感謝。

参考(北欧日記 2007.8.24)

オスロ国立美術館にて

オスロ市庁舎

Posted by ろん