ecute物語/鎌田 由美子

■ビジネス・経済, 龍的図書館

4761264675 ecute物語―私たちのエキナカプロジェクト
鎌田 由美子
かんき出版 2007-10-10
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エキナカビジネスがいま注目されている。

それを象徴するecute(エキュート)は、JR東日本が展開する駅の改札内で展開するショッピングモールで、大宮を皮切りに、品川、立川と展開している。品川は何度か利用したことがあるが、とても駅改札内とは思えない、綺麗で、ゆったりとした作りで、さまざまな店が並んでいるので、列車の待ち時間だけでなく、わざわざ入場券を買ってまでやってくるひともいるというのも頷ける。

そもそも「エキナカ」という言葉自体、JR東日本の若手社員が生み出したのだという。この言葉がもう広く知れ渡っているという点から見ても、こうしたビジネスが、ずいぶん認知されたことがわかる。

この本では、ecuteプロジェクト立ち上げから今日に至るまでのさまざまな出来事を、プロジェクトリーダーや関係者が証言している。このプロジェクトは、外部のコンサルとか専門家といった部外者ではなく、JR東日本グループ全体の力を結集して、さまざまな経歴を持つ人たちが集まって作り上げられたことがよくわかる。大変な苦労やさまざまな抵抗に直面しながらも、個々の経験を生かして持ち寄ったアイディアが次々と花開くさまは、見応えがある。

しかし、一方、やはりどこか、首をかしげてしまうような思いをしてしまった。

そもそも、全く何もないところからはじめるプロジェクトは、さまざまな問題に直面する。大変な苦労をしたというが、仕事をしていれば当然のことで、そう目新しいことではない。それに、首都圏の駅と言えば、黙っていたって人は集まってくる。こう言っては何だが、人を集めることについてはこれといって努力はいらないともいえる。すでにできあがったビジネスを見てしまったから言えることかもしれないが、成功して当然に思えてしまうのだ。

本書の冒頭から、JR東日本会長、副本部長、運営子会社社長…と挨拶が続く。まるで記念式典にでも参加しているかのようだった。確かにJR東日本にとっては、無駄なスペースがお金を生む場所に変わり、さぞかし喜ばしいことだろう。

しかし、最も気になったことは、こうしたビジネスが盛んになればなるほど、駅の中ばかりがにぎやかになり、駅の外に人が流れなくなる…ということに対する懸念に対しては、どう考えるかという点だ。駅構内にものすごく魅力的なお店ができたことで、駅周辺の店は駅の外に人を呼ぶための一層の努力を課すことになったのは、仕方がないということか?

単純に「成功物語」として読み終えることはできない気がした。