タイムマシンをつくろう!/P.C.W. デイヴィス 林 一

■科学,龍的図書館

4794212232 タイムマシンをつくろう!
P.C.W. デイヴィス 林 一

草思社 2003-06-18
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まず目次を見ると章立てが非常に簡潔なのがわかる。

第1章 未来への行き方
第2章 過去への行き方
第3章 タイムマシンの作り方
第4章 タイムマシンに関するQ&A

非常にわかりやすい。まず未来と過去への行き方についての詳しい説明があって、基本的な部分を学ぶ。その後、具体的な作り方の説明と続き、最後にQ&A形式でギモンに答えるという流れ。まるで何かのちょっとした工作のような感覚。

意外と知られていないが、未来に行くのと過去に行くのとでは、未来の方が圧倒的に楽なのだ。過去へ行くためには、いくつかの仮説が実証されないといけないが、本書はそのあたりについてもちゃんとフォローしている。

詳細は第3章に書かれているが、本書の表紙を開いた扉のところにも作り方が書いてある。

ステップ1 10兆度の超高温状態を作る
ステップ2 超高温の塊を圧縮、さらに加熱する すると小さなワームホールができる
ステップ3 できた微小ワームホールを拡大する
ステップ4 ワームホールの出口と入口の間に時間差をつくる

この指示に従って作れば簡単に…できるわけがない。

確かに、あくまで理論上のことではあるが、まったくでたらめの話ではなく、作り方がはっきりしているというのは事実で、こうなると、なんだか「タイムマシン」というものの存在がにわかに現実味を帯びてくるような気がする。

時間を移動することに関するQ&Aで、もっとも気になるのは、タイムマシンで過去を変えようとしたときのパラドックスだ。たとえば、過去に戻って自分の親を殺そうとしたらどうなるか?

考えられる説として挙げられているのは、決して過去をかえることはできないという説。つまり、過去を変えようと思っても、実はいまの自分が存在しているのは、過去の積み重ねの結果であり、決して変えることはできないということだ。過去に戻って親を殺そうとしても、何かの邪魔が入って決して殺すことができない…というのだ。元の世界との整合性がきちんと保たれるようになっているというのがこの説だ。

その一方で、実際に殺すことができるという説もある。そうなったとしても、その瞬間に自分がこの世から消えてしまうようなことはなく、殺したその瞬間からまた新しい現実が生まれ、殺されなかった現実と共存されるという説も紹介されている。

もうわけがわからなくなるが、いろいろ考えてみるのも、それはそれで楽しい。タイムマシンができるまでには相当時間が掛かりそうだが、空想の世界では今すぐにでもできる。ときどき、頭の中のタイムマシンを使って時間旅行をしてみるのも楽しそうだ。