キノの旅/時雨沢 恵一
キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461)) 時雨沢 恵一 メディアワークス 2000-07 |
手に取るとこれまで手にしてきた本とは違う雰囲気の表紙や挿絵のせいか、少々とっつきにくい感じがした。どこかある種の“萌え系”の雰囲気も感じたし、事実この本のことをインターネットで検索するとそれを裏付けるような記事やイラストが多く出てくる。
しかし読み進めてみると、偏見に過ぎないということがわかってきた。確かに主人公のキノは萌えるキャラクターかもしれないが、それだけではここまでの人気は出ないだろう。
主人公のキノは、なぜかおしゃべりのできる二輪車モトラド(空を飛ばないものだけを指すらしい)とともに、世界中を旅する。それぞれの国では、独特の世界や独自の文化がある。なんとなく「銀河鉄道999」や「星の王子さま」を思わせると言えばイメージは伝わるだろうか。
第六話の、絶対に対抗できないような弱小の国の住民を虐殺することで、もともとあった大きな戦争を回避する「平和の国」は、特にいろいろ考えさせられた。
物語に登場するエピソードは、読者にさまざまなメッセージを投げかける。すべては空想の世界であり、あくまでフィクションなのに、妙にリアリティを感じた。
こうした感覚は、いつか似たような光景を見てきたからなのかもしれないし、もしかすると、いずれ見る光景なのかもしれない。
※この本は、ときどきお邪魔させてもらっているブログの作者、遙さんお薦めの本でした。紹介ありがとうございました!