深海のパイロット/藤崎 慎吾
深海のパイロット (光文社新書) 藤崎 慎吾 田代 省三 藤岡 換太郎 光文社 2003-07-17 |
我が国には、世界で一番深く潜ることができるしんかい6500のという潜水調査船がある。
本書の“はじめに”に書かれていたが、宇宙飛行士にはスター並みに知名度がある有名人が多いのに、潜水調査船のパイロットになると、知られている人なんて全くいないという指摘に、確かにそうだと思った。
日本科学未来館にある しんかい6500の実物大模型(内部) |
宇宙も深海も、生身の人間が決して行くことができない過酷な場所であるということや、どちらも国家プロジェクトであるという点も同じである。
この知名度の違いはなんだろう?
ドーンと華々しく打ち上がるロケットと、ドボンと沈んでいく深海調査船…出発するときのインパクトの違い?
潜水調査船の操縦の仕方や運行スケジュール、パイロットの思いや、パイロット同士のライバル意識、果ては、トイレの問題まで、知られざる深海調査船のあれこれについて、興味深い話が紹介されている。
しんかい2000の後継船として建造された、しんかい6500なのに、パイロットの意見があまり反映されなかったという話や、予算の削減で有人潜水調査の見通しが決して明るくないということとなど、気になる話もある。
深海は宇宙同様、まだまだ知られていないことばかりだ。未知なる生命やエネルギー、地震のメカニズム、調べなければならないことはいくらでもある。
宇宙では遅れを取っている日本は、深海の分野においては世界一の調査船を持っているのに…今後日本が取るべき道について考えさせられる。