ホワイトカラーは給料ドロボーか?/門倉 貴史
ホワイトカラーは給料ドロボーか? 門倉 貴史 光文社 2007-06 |
ホワイトカラーの一人として、ちょっと気になるタイトルではある。
世界的に見て、日本の労働生産性が低いと言われていて、実際に国際比較すると先進の中では最下位らしい。でも本当にそうなんだろうか?
さまざまなデータを用いた解説を通じて、それが大きな誤解であるということがわかってくる。決して日本の生産性が悪いわけではないのだ。
さらに、ホワイトカラー特有の問題点…サービス残業がなくならない理由や、ホワイトカラーの評価の難しさといった点についても、わかりやすく解説している。このような状況で、ホワイトカラーエグゼンプションが導入されることの問題についても指摘している。
いま日本が、景気が拡大傾向にあっても、企業の発言力ばかりが強まり、労働者の賃金は増えない傾向にあることにも警鐘を鳴らす。当然だけど、いくら企業の業績が改善したとしても、大多数を占める労働者の賃金に反映されず、このまま増えない状況が続けば、いつか景気の拡大は止まってしまう…というのは十分あり得る話だ。
グローバル化、労働市場の流動化が進んでいく中で、これまでの常識や考えが通用しない時代になりつつある。
いまは正社員と非正社員の賃金格差が問題になることが多いが、今後、ホワイトカラーエグゼンプションが導入されてくると、正社員間での格差や、海外から安価な労働力に押されてさらに賃金が抑えられる…なんてことも起きてくるだろう。
本書は、日本における労働環境の現状を知るにはわかりやすく最適だと思う。