日本の大間違い/上野 忠郎

■文学・評論,龍的図書館

日本の大間違いテレビ番組のもたらしたもの 日本の大間違いテレビ番組のもたらしたもの
上野 忠郎

文芸社 2007-04-01
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図書館で見つけた本。新刊だったし、「テレビ番組がもたらしたもの」という副題がついていて、僕も共感できる話が出てるかなと思いながら読んでみたら…。ツッコミどころ満載の、“トンデモ本”と思えるような内容だった。

内容が正確性を欠いていたり、著者の主張の押しつけであったり、読むに耐えない本であった。 この本がこうして出版されたこと自体が大間違いだったのではないかと思えるくらいだ。

指摘せずにはいられないので、いくつか紹介する。(→太字 は、僕のツッコミ)

たとえば、きちんとした調査を怠り、思い込みによる主張が多い

「村」の読み方。この文字が住所地名として表記される時の読み方は昔から「ムラ」である。これを“△△ソン”と発音する読み方には過去に一度も接したことがなく、突如として聞いたから非常な違和感を覚えたという。全国のどの地域でも“ムラ”と発音している。不明と思う時には、市町村役場のような公的機関で確かめればよい。(p.26)
→正式に“ソン”という村は全国に多数実在し、著者の指摘は誤っている。

音響機器メーカーDENON。旧社名である電気音響株式会社を略して“デンオン”が正式名称であるにもかかわらず“デノン”と発音する人が多いと苦言を呈している。しかも追補に、書店に並ぶオーディオ情報誌の記事にも「デノン」という表記が見られることから、若い執筆者も意味を知らないと嘆く。(p.188)
→2001年に社名変更して現在は「デノン」となっていることを著者は知らないようだ。

たとえば、自分の主観を押しつける

造幣局の桜の通り抜けを“風物詩”と伝えたアナウンサーのコメント。風物詩とは「その季節の感じをよく表すもの」という意味を自ら掲げている一方で、桜の通り抜けは「意味に当てはまらない」という主張(p.212)
→多くの人たちが風物詩と思えばよいのであって、ダメな理由がわからない。

KIOSKをキヨスクと発音するのはおかしい。キオスクで良いではないか。(p.207)
→あくまでブランドの呼称であり、おかしいという指摘は不適切。

池田湖に未確認の生物住んでいるという噂。その生物を人は「イッシー」と呼んだ。ネス湖(Ness)に棲む生物だから愛称としてネッシー(Nessy)は正しいが、池田湖の場合は、イッキー(Ikky)となるはずなのに…(p.48)
→呼び方は自由であり、あだ名や愛称の付け方に決まりはないと思う。

「アイドル」の本当の意味がわかっていない。本来は名詞であれば偶像や崇拝される人という意味であり、十代の“子供芸人”がアイドルのはずがない(p.146)
→もともとの意味からすでに日本語しては変化し、理解して使っていることを認めない。

「ベストテン」と言ってから「…では、第10位から見ていきましょう」という表現。“ベスト”と言ったではないか、そこに順位がつくのはおかしい(p.194)
→「ベスト10位」と言ったらおかしいが、「第10位」であれば別におかしくない。

あまり本気で反論するのも大人げないので、このへんにしておこう。