人はなぜ逃げおくれるのか/広瀬 弘忠
人はなぜ逃げおくれるのか―災害の心理学 広瀬 弘忠 集英社 2004-01 |
大きな災害や事故が発生すると、すぐに人びとはパニックに陥る…これはなかば“常識”のように思っていることだけれど、実はパニックはそうめったに起きることはないという。
本書で挙げられていたパニックになる条件は…
切迫した状況に置かれたという意識が、人びとの間に共有されていて、多くの人びとが、差し迫った脅威を感じていること
(→逆に、意識が共有されてなければ、パニックになりようがない)危険を逃れる方法がある、と信じられること
(→逆に、逃れる方法がまったくないのならば、パニックになりようがない)脱出は可能だという思いはあるが、安全は保証されていない、という強い不安感があること
(→逆に、誰もがその場から逃れられる安心感があれば、パニックになりようがない)人びとの間で相互のコミュニケーションが、正常には成り立たなくなってしまうこと
(→逆に、全体の状況がうまく会話できていれば、パニックになりようがない)
こうした条件が重なると、残念ながらパニックは起きてしまうが、パニックを恐れるがあまり、誤った判断を行うと、むしろパニック以上に大きな問題が起き、被害を拡大してしまう。
ある範囲までの異常は、異常だと感じずに、正常の範囲内の者として処理するようになっている心のメカニズムを“正常性バイアス”という。この心のメカニズムが、パニックを発生させないどころか、むしろ被害を拡大してしまうことがあるということを聞くと、いろいろ心当たりがあることを思い出す。
- ちょっと強めの地震が来ても、収まったら津波の心配はしない…。
- 非常ベルが鳴っても「どうせまた誤報だろう」と思って気にしない…。
もう、みんな慣れっこになってるのだ。パニックより、問題なのはこうした“慣れ”かもしれない。
先日が地震の確率が示された予測地図の最新版が発表されたばかりだが、たとえば本当に大地震が起きたとき、僕はどう行動するんだろう…と考えてしまった。やはり、正常性バイアスが働いて、ちゃんと避難できないかも。
僕も含めて、少し先入観を持たないような意識を持つ時期に来てるような気がする。
→正常性バイアスについての、かなり詳しい記述はこちら