2044 動物園で感じたこと

いきもの

ちょうど読んでいた「動物園にできること」という本の内容が、あまりにタイムリーだったこともあって、昨日行った多摩動物公園に対する評価は、ちょっと厳しいものにせざるを得なかった。

この本で盛んに言われていた、エンリッチメントについての記述も散見されたが、これはごく一部の動物にしか適用されていないように見受けられた。(エンリッチメントに関してはこちら


オランウータンは手前から向こうに
向かうロープを伝っていく
(逆光でわかりにくいですけど)

エンリッチメントを実践している動物としては、オランウータンがとても有名だ。実に150mにもわたるスカイウォークを設けて、オランウータンが空中を自由に行き来できるようになっている。残念ながら今は冬季休業中ということで見られなかったが、こうした試みが、他の動物でも見られるようになるといいと思う。もちろん、そもそもエンリッチメントが適切に機能する動物かどうかとか、なにより予算や人の都合などの問題もあって容易ではないとは思うが、見る側(来園客)にもそうした意識を持つことは大切だと思う。

園内はかなり広いのに、意外と動物たちのいる場所は狭い印象を受けた。
人間の方は、ハイキング気分で木々の中を歩いていくのは気分は良いけれど、果たして動物にとってはどうなんだろう?という気がしてしまった。

テレビやマスコミで取り上げられ、急激に人気の出る動物はとても多い。それは単に面白い格好や行動ばかりが注目されるだけで、その動物の素性や本来の生息地の状況などが意識されることなどはまずあり得ない。その特定の動物だけが注目されるだけだ。

寝そべってかなりだらしのない格好を見せるカンガルー「ハッチ」が有名になったが、ここではそんなカンガルーでいっぱいだった。なんてことはない、どんなカンガルーでもこんな格好をするのだ。同じようなことは、レッサーパンダ「風太」でも言える話で、レッサーパンダはもともと、すっくと2本足(しっぽも使ってるけど)で立つことのできる動物で、実はそんなに珍しくもらかったらしい。

希少動物にもっと関心を持ってもらおうとする試みは一部では感じられたし、そうした記述もあったけれど、これはちょっと悪のりと言えないだろうか?
モウコノウマ(蒙古野馬)が絶滅危惧種に指定されたことを伝える説明書だが…


興味は惹くと思うけれど…

「絶滅危惧種に格上げになります おめでとう」

果たして、おめでとうなんだろうか?
もちろん、きちんと解説も合わせて書いてはあるものの、伝わってくるメッセージに、妙なズレを感じてしまった。

メッセージといえば、入口でもらえるパンフレットも、動物の所在を示す地図だけで、どういった視点で動物を見て欲しいとか、今動物が置かれている状況といったことが書かれておらず残念だった。

とりとめもなく、ダラダラと書いてしまったが、なにげなく見過ごすという感じがしなかったのだ。
たまたま、この関係の本を読んだために、動物園についていろいろ考えてしまったが、知らなければ知らないまま、特に何の意識もせずにやり過ごしてしまったかもしれない。それくらい些細なきっかけだった。

北海道の旭山動物園の例を挙げるまでもなく、動物園に求められることが少しずつ変わり始めているように感じるし、多摩動物公園でも、オランウータンのように、まさに今変わり始めたところもある。今後、もう少し注意深く見守っていきたい。

Posted by ろん