隠蔽/奥野 修司

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4163534806 隠蔽―父と母の「いじめ」情報公開戦記
奥野 修司

文藝春秋 1997-11
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ちょうどいじめによる自殺が多発したのと同じくらいのタイミングで読んだ。

この本は、1988年12月にいじめによって自殺した中学生を持つ両親が、学校や市を相手に“戦い”を挑んだ記録。

なぜ自分の子供が自殺という最悪の結果を迎えねばならなかったのか?それを知るのは親としては当然だし、原因となった学校もちろん学校を管理する市が、積極背的に伝えることも当然であり、義務だ。

当然のことであるはずなのに、両親が“戦い”をしなければならないことに、この問題の根深さがある。もう20年近くも前に起きたことなのに、つい最近のニュースも、現実から目をそらし事実を隠蔽しようとする学校や市の姿勢は、寸分違わぬ経緯をたどっていることを知る。

情報公開制度を利用して何度も事実を明らかにしようとするものの、情報公開制度とは名ばかりで、都合の悪い部分は非公開とされ、ごく一部が公開されても戦時中の検閲のように黒く塗りつぶされ、ひどい場合は公開される前に消却されたり、改ざんされたりしている。いったい何を信じたらいいのか…と、気が滅入ってくる。

そして、この本で取り上げられた“戦い”は、結局解決を見ていないのだ。最後まで事実がわからぬまま…である。

いじめによる自殺は、どこかで終止符を打つことはできないのだろうか? 防ぐための努力はあちこちでされているのだろうが、何か間違えてるってことはないのか? もちろん僕はまったくの素人だし、知らないでものを言っているのだけれど、疑問も持たずにはいられない。