1917 松本かつぢ展

定点観察

先日から行く予定にしていた美術館の企画展が、いよいよ今週末までということになっていたので、行ってきた。

途中、東京大学の構内を通り抜けて、目的地の弥生美術館に着く。

見学したのは「松本かつぢ展」
松本かつぢは、昭和初期から戦後に至るまで活躍した挿絵作家で、かつて、かなり人気を博したというだけあって言われてみればどこかで見たことがある。

彼の代表作「くるくるクルミちゃん」に登場するキャラクターの、クリッとした目の大きさは、いまの少女漫画にも十分通じるし、ディズニーに影響を受けたという大胆な絵の構成などは、少女漫画のみならず、漫画の世界全般を見渡しても、おそらくその先駆けとなったはずだ。それらが、昭和10年代の出来事というのだからちょっとした驚きだ。

数多くの彼の作品が紹介されていたが、中には、どんな内容なのかさっぱり分らない「海山失敗競べ」とか、当時の時代背景を色濃く反映した「漫画銃後報告」「隣組かるた」なんていうのもあった。

興味深い話としては…
また、当時の読者たちにとって、友達とのコミュニケーションツールの主流は手紙であり、まずどんなレターセットを選択するかで、本人のセンスが問われたなんていうことが、やはり昭和10年代にあったという事実がなんだか楽しかった。銀座の伊東屋では当時、こうしたレターセットがずらりと並んでいたという。
雑誌にはレターセットが当たるという懸賞が行われ、プレゼントに当たらなかった人たち向けに、残念賞としてのポストカードが全員プレゼントされたなんて話も興味深い。雑誌の懸賞にいわゆる“全プレ”が当時からあったという。もちろんこのポストカードは、かつぢの作品だ。

いまでも古さを感じさせない作風の斬新さはもちろん、我が国で初めてのキャラクターグッズが作られたり、ディズニーの作品を取り入れようとする先見性など、日本の漫画界に大きな影響を及ぼした人物にしては、あまり知られていないように思う。もう少し脚光を浴びてもいいような気がする。

Posted by ろん