写真のワナ/新藤 健一

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4795816026 新版 写真のワナ―ビジュアル・イメージの読み方
新藤 健一

情報センター出版局 1994-04
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 もともと本書は1984年に書かれたものだったが、湾岸戦争のあの「油まみれの水鳥」写真が発表されたことに喚起されたのか、その10年後に新版としてあらためて出版されたことももあって、若干古い内容が多い。
 それでもここで述べられていることは、普遍的な問題ばかりで、初版発行から20年過ぎた今でもあまり状況は変わっていない。そもそもこの本を読むきっかけとなったのは、週刊誌に掲載された写真に付けられたキャプションが名誉毀損であるとして訴えた裁判があった…というようなニュース新聞で見たことからだった。その記事に本書の著者がコメントしていたので、この本を知ることができた。
 さまざまな実例を挙げていて、とてもわかりやすいのだが、いかんせん写真自体が古いのか、印刷技術が悪いのか、はたまた引用元の画質が悪いせいか、とても見にくい写真が少なくなかった。特にひどかったのは、「撮影者名、クレジットに要注意」と書かれているのに、肝心のクレジットの文字自体が、大きさにして1mm程度あるかないかで、もともとが新聞記事のコピーなので、文字がつぶれかかって、虫眼鏡がなければ決して見られないような状態というのもあった。

 写真は真実を伝える…これは多くの人にとっての前提条件ではないだろうか。「証拠写真」なんて言葉に゛代表されるように、ありのままが残されるということでは、部分的には間違いはない。ただそのさらに前提条件として、写真はあくまで一瞬をとらえたものであり、それ以上でもそれ以下でもないということだ。同じ写真であっても、立場が違えば、全く違った解釈ができるのが写真なのだ。
 帝銀事件で死刑判決を受けた平沢貞通を極秘に撮影した秘話なども興味深い。

 原爆投下直後の写真として紹介されてきた写真は、実は広島と長崎が入れ替わって紹介されてきただとか、合成写真や捏造写真の作られ方など、知られざるエピソードがたくさん紹介されている。新版となっているが、さらにその後の情報も載せた新新版を希望したい。
 
(2005/6/1) 【★★★★☆】 -05/6/5更新