「電車男」は誰なのか/鈴木 淳史

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「電車男」は誰なのか―“ネタ化”するコミュニケーション 「電車男」は誰なのか―“ネタ化”するコミュニケーション
鈴木 淳史

中央公論新社 2005-01
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 最初「電車男」というのを聞いて、鉄道マニアか何かの話かと誤解していた。で、これが出版され、話題になってきたところで、インターネットでいろいろ調べてみた。
 すると、どうも2ちゃんねるの世界では、この出版という行為自体、相当否定的らしいということがわかった。掲示板のスレッドが出版されるという、2ちゃんねるの住民たちには直接関係ないことなのに、なぜここまで執拗に反対するのか、ちょっとわからなかった。

 本書ではまず、電車男を生んだ「2ちゃんねる」という存在自体を検証する。それをふまえて、そもそも「純愛」とはなにか?真偽論争、そしてなぜ2ちゃんねるの住民たちがここまで否定するのかといったことなどについてなどに言及していく。

 直接本文とは関係ない部分だが、日本は「学歴社会ではなく、学校歴社会だ」という言葉が気になった。確かにもし本当に学歴社会ならば、大学院出身の人の方が、東京大学出身という人より、もっと優遇されるはずであるが、現実ではそうならない。明らかにどこの「大学」を出たかが問題となるのだ。著者はそれをあえて「学歴社会」と呼ぶ点に注目している。僕もこの点にはとても共感を持った。

 脚注がものすごくたくさんある。あとから脚注を見ればいいかと思って読み進めていくと、章末で50を越える脚注にびっくりするので、読む方は本文で脚注が現れたら、すぐに章末を見に行った方がいいと思う。最後に見ると、何が書いてあったか忘れてしまう。

(2005/6/1) 【★★★★☆】 -05/6/5更新