下流社会/三浦 展
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下流社会 新たな階層集団の出現 三浦 展 光文社 2005-09-20 |
一億総中流という意識が崩壊し、日本も階層化した社会が生まれつつあるのではないかと危惧する本が、今年はたくさん出版されていて、本書もそのうちの代表的な一冊だ。相変わらず図書館から借りているのでよく分からないけど、どれも売れているらしい。
本書の冒頭に、こんな質問が載っている。当てはまる数が多ければ、下流に近いとのこと。ちなみに、チェックボックスにチェックを入れても、何も起きませんのであしからず。
1. 年収が年齢の10倍未満だ
2. その日その日を気楽に生きたいと思う
3. 自分らしく生きるのがよいと思う
4. 好きなことだけをして生きていきたい
5. 面倒くさがり、だらしがない、出不精
6. 一人がいるのが好きだ
7. 地味で目立たない性格だ
8. ファッションは自分流である
9. 食べることが面倒くさいと思うことがある
10. お菓子やファーストフードをよく食べる
11. 一日中家でテレビゲームやインターネットをして過ごすことがよくある
12. 未婚である(男性で33歳以上、女性で30歳以上)
あれ、結構当てはまってる…別にいいけど。
そういえば、かつては「一億総中流」と呼ばれていた時代があった。自分の記憶の中にも、国民の多数が「自分は中流」という意識を持っていることが調査により分かったみたいな新聞記事を読んだ記憶もある。
この調査の基本になっているのは、内閣府が実施している国民生活世論調査の中の一項目「あなたの生活程度は世間一般と比べてどれくらいですか」という質問に対する回答だ。かつては「中の中」が圧倒的だったものが、近年では「中の中」が減り「中の下」や「下」が増える一方、「中の上」に変化は見られない状況となっている。これが階層格差を意識面から裏付けると筆者は言う。
趣味や生活習慣、食生活はもちろん、人生観に至るまで、上、中、下では、数字に表れるほどの違いが見られることが、さまざまな調査結果から裏付けられている。決めつけ方が強引な印象も受けるし、そもそもサンプルの数が少ないので、まぁこういった傾向が見られるという程度にとどめておいた方がいいかもしれない。
「私は20代のサラリーマン時代、人より非常に仕事が速かった。だから残業が少なく給料が少なかった」…と言い切っちゃう(p.266)筆者だし、まぁ、そんな見方をしてもバチは当たらないような気がする。なんとなくだけど。
結局どうしたらいいのか?という結論は出てこないし、最後の章ではいろいろ提案は出ているけど、ほとんどがふざけた冗談みたいなネタばかりなので、ちょっと消化不良を起こすかも。
そんな中で、本書の最初の方に書かれていた、階層意識の進行が経済にどのような影響を及ぼすかという点については、わかりやすい事例で説明されていたので、忘れないうちに、ちょっと引用…。
100万人にスーツを販売するという例で、かつての日本では中流が群を抜いて多かったから、中の階層にひたすらたくさん価格も中のスーツを売れば良かった。しかし中流意識の人たちが減り、上流と下流に分かれていくと、単純に売り上げが減っていってしまう。さらにデフレが進行し、中流の人たちが買う商品の価格が下がってしまうと、もっと売り上げは減ってしまう。
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(2005/12/23) 【★★★☆☆】 -05/12/23更新