科学技術はなぜ失敗するのか

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4121501543 科学技術はなぜ失敗するのか
中野 不二男

中央公論新社 2004-11
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 もちろん、なにごとにも、成功があってその裏にはたくさんの失敗がある。その失敗がなければ成功しないなんてことは、誰もがよく知っている。けれど、2002年2月4日のH-2Aロケットの”打ち上げ成功”のニュースは、そうした失敗を認めないという雰囲気がどこか漂っていた。本来の打ち上げ目的以外で空いたスペースを、他の衛星を乗せる”便乗衛星”が正常に機能しなかった点だけをことさら大きく取り上げていたのだ。これでは問題点がぼやけてしまう。「ヒト型ロボットの開発では日本が世界のトップを独走している」という話はよく聞く。確かに、二足足のロボットが軽やかに歩いたり、踊ったりする姿をたびたび見かける。しかし、これらのロボットは決して自分の意思で動いているわけではなく、作業者のコントローラに忠実に従って動いているに過ぎないのだ。ちゃんと指示通り動けるロボット技術は確かにすごいかもしれない。けれど、それができるからといって、これが完成されたロボットの姿だと誤解されるようなマスコミの報道には、考え直してもらいたいという著者の考えには同感だ。研究で生まれてきた技術が世の中の役に立ち、広まっていくことが目的であって、「阿波踊りが踊れるロボット」が世の中に広まることではない。変に卑下する必要はないけれど、日本は何かと「世界の最先端」にいるという前提で報道されてしまうことは、以前から問題があると思っていた。進んでいるものは進んでいるし、ダメなものはダメだし、まだまだこれからの技術であれば、それはそれできちんと報道するべきで、そうしたメリハリのついた正確な報道が科学離れを防ぐ一助になるんじゃないかと思う。
(2005/2/1) 【★★★☆☆】 -05/02/20更新