希望格差社会/山田 昌弘

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希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く
山田 昌弘

筑摩書房 2004-11
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 最近では「勝ち組」と「負け組」という分け方が多く見受けられる。それらのグループの差がどんどん大きくなっていることが、さまざまな社会問題を引き起こし始めているという話。現在起きている様々な社会問題は「夢」や「希望」を持てなくなったことに原因であるとする主張は、「そんなこともあるものかな」程度に思いながら読み始めた。思い起こせば、「夢」とか「希望」とか大事なものだとは思っても、実は意外と軽視してしまっていたことが多かったかもしれない。読み進めていくうちに、実はその「夢」や「希望」がとてつもなく大きな存在であり、社会秩序というより社会全体を支えているものなのだということを思い知らされる。そして、かつての日本(って言ったって、1990年代はじめくらいのごく最近!)では、問題がありながらも、絶妙なバランスを保ちながら、なんとか国民が希望をもって生きてきたのに、それらが急速に崩れてきたらしい。それが顕著に表れたのが1998年。それ以降は、あらゆる分野で、「勝ち組」と「負け組」の二極分化が始まったのだ。どんどん絶望的な気分になってくる。最後の章では、著者なりの解決策を挙げているが、本書の大部分を占める希望格差社会の状況を知れば知るほど「こんな解決策でなんとかなるものかいな?」と思えてしまうのは、自分でも「希望格差」が広がっていると感じる場面が多く、小手先の改革ではどうしようもないだろうなと感じるからかもしれない。今の日本の状況を憂いている人、今の自分に満足していない人、リスクを回避するために問題を先送りにしている人…必読。非常におもしろかった。
(2005/1/5) 【★★★★★】 -05/1/5更新