東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)
東京都庭園美術館は、目黒駅から徒歩で10分弱くらいのところにある。
すぐ隣が、国立科学博物館の分館である、国立自然教育園。
目黒付近では最も広大な自然の残る場所となっている(実際はこのあたりは港区)
朝香宮が皇籍離脱するまでの邸宅であった建物を、いまでは美術館として使用されている。
美術館ということで、通常は展示する作品が“主役”であり、建物や調度品、、照明等の意匠を鑑賞しにくかったが、2008年1月に開催された企画展では、この建物自体を公開した。
通常の展覧会開催中は写真撮影が不可だが、この企画展開催期間中は、写真撮影が認められたので、この機会を逃してはなるまいと、訪れてみることにした。
玄関に入るとすぐに目に飛び込んでくるのが、この大きなガラスのレリーフ。
フランスの著名なガラス工芸家ルネ・ラリックによって作られている。まるで、「ようこそ」と出迎えてくれるようだった。
受付を済ませて中に入ると、とても明るい大広間に出た。
現在の美術館としての機能上、いったん受付と廊下を経由するようになっている。
本来の動線は、玄関から直接この大広間に出るようになっているから、先述のガラスのレリーフの扉を開けて、この大広間に入った客人は、きっと明るさと部屋の広さに圧倒されだろう。
大広間の奥には、大きな鏡がはめられて、部屋の広さを一層引き立たせるようになっていた。
大広間から、客室に続く次室(つぎのま)には、部屋の真ん中に巨大な陶器が置かれている。
かつては、この上部は照明がつくようになっていて、ここに香水を入れて、照明の熱で香りを漂わせたという由来から、香水塔と呼ばれるようになったとのこと。
次室の隣の大客室は、天井の大きなシャンデリア、大きな窓が印象的だった。
当日は雨であまり明るくなかったが、晴れていたら、きっと窓からは庭園が見えて、イメージも変わるかもしれない。
部屋は、一番奥の大食堂へと続く。
大客室と、隣の大食堂は、アールデコの特徴が最もよく表れているのだそうだ。
大食堂は、半円状に庭園側へ大きく突き出し、またこれまでの部屋と違った雰囲気を醸し出していた。
シャンデリアは、ラリックの作品。
壁には、果物をモチーフにしたレリーフ、魚をモチーフにしたラジエータカバーなどがあって、来客時、会食用に使われていた食堂らしさが感じられた。
暖炉の上には、壁画はアンリ・ラパンの作の油絵が飾られている。中央に描かれた人の顔は、妙にユーモラスで、ちょっとした“遊び”なのかな?なんて思った。違うかもしれないけど。
各部屋には、暖房用のラジエーターがあって、それらを覆うカバーにも、さまざまなデザインが施されていた。中には朝香宮妃自らデザインしたものもある。
二階に上がってみる。
ここからは朝香宮家のプライベートな空間となる。
全て確認したわけではないのでわからないが、各部屋の用途に合わせて、ひとつとして同じ照明器具は使われていないようだった。
2階のベランダと称される場所は、白と黒の大理石で作られた市松模様が、強烈な印象を与える。
“モダン”という言葉がぴったりだ。
天気のよい日は、きっと庭園に面した巨大なガラスから燦々と日が降り注ぐことだろう。
最近の建物でも、こうした市松模様のようなセンスの良さには、なかなかお目にかかれないような気がする。
アール‐デコ(art deco)とは、1910年代から30年代にフランスを中心に流行した美術工芸の様式のことで、直線的で単純なデザインがその特徴とのことだが、この旧朝香宮邸は、その特徴があちこちにある。
なんでもない壁や天井にも、彫刻や意匠が凝らされているのを見つけると、技術やデザインの粋を集めた当時のデザイナーや職人たちの、心意気みたいなものが伝わってくるような気がする。
ふだん、美術館としては使用していない、小食堂が公開されていた。
ここは他の部屋と違って、とても“和”のイメージ。
写真撮影はOKといっても、部屋全体がとても暗いので、写真がピンぼけで荒い感じになってしまっている。
東京都庭園美術館(旧朝香宮邸) | |
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設計 | 宮内省内匠寮工務課 |
所在地 | 東京都港区白金台5-21-9 |
用途 | 住宅(現在は美術館) |
建築面積 | 建築面積1,048.29m2、延床面積2,101.47m2 |
構造 | 鉄筋コンクリート造 |
階数 | 地上2階、地下1階 |
竣工 | 1933年(昭和8年) |
最寄り駅 | 白金台(東京メトロ南北線、都営三田線) 目黒駅(JR山手線) |
リンク | 東京都庭園美術館 |
建築マップ 東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)
最終更新日:2008年1月13日
作成日:2008年1月13日
作成者:ろん
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