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龍的書店

3月2005年4月5月
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2005年4月


物はいいよう

斎藤 美奈子/著
平凡社

1,680円(税込)
 「フェミ・コード」(=FC)とは、フェミニズム的に問題があるような場合に「それってFC的にどうよ」みたいにして使う言葉らしい。単刀直入に「セクハラ」という代わりの言葉として、著者が考えた言葉なのかな?
 日常生活の中で、個人的にはあまりセクハラ(=FC)かどうか?なんてあまり考えたことがなかった。本書によると、結構微妙な部分で問題になる場合が多いことに驚く。解説してもらえれば「なるほどね」となるが、そうでない限りは、言う方も聞く方もあまり意識しないで済んでしまうことも多いのではないだろうか?それだけに、根が深い問題なのかもしれない。まぁ、明らかにおかしな事を言う政治家や著名人は少なくないけど。

 FC的にあまり関係のない部分ではあるが、以前から自分も気になっていた話が載っていたので、それだけで嬉しくなってしまった。
 「日本では」「西洋では」と、やたら「ではではでは」を連発する人を「出羽(でわ)の守」と呼ぶらしい(知らないけど)が、そのおばさん版を著者は「出羽おば」と命名。そんな出羽おばの特徴として…

 第一に、結婚相手が欧米人であること。
 第二に「カタカナ+漢字」の名前を名乗ること。
 第三に、結婚相手の国生活拠点にし、そちら龍の生活になじんでいること。

 以上の三つの条件をクリアした上で、「日本では」「××(←夫の国名)では」を連発しつつ「遅れた日本人」を啓蒙する本を書けば、晴れて?出羽おばの有資格者となるわけだ。
 以前、マークス寿子という人が書いた本を読んでかなり不快な思いをしたが、その本からの引用で…

 日本の女性は夫や子供の地位があがれば自分も偉くなると思うところがあり、これが日本の女性の意識を古いままにしている大きな要因

 離婚してるのに別れた夫の名前(地位)を利用しているのでは?という著者の指摘は、まさにもっともな話である。

 そもそも、ジェンダーフリー(和製英語なのね)の話題になると、とかく「男女差を認めないのはおかしい」という議論になりがちだが、著者に言わせると…色鉛筆に例えるならば、もともと12色ある色鉛筆を強制的に赤と青の二色に分けるというのではなく「赤と青の二色に分類する前に個人差を尊重しろ」つまり「12色は12色のまま認めよ」というのだ。主張ははっきりしているけれど、いざ実践しようとするとなかなか難しそうだ。これまであまり意識してこなかった分野にちょっと関心が持てた。

(2005/5/1) 【★★★☆☆】 −05/5/1更新


自分で決められない人たち

矢幡 洋/著
中央公論新社

777円(税込)
 依存性こそ日本人、日本社会の心理を解明する鍵であると考えている著者が、あらゆる実験や事例を元に、物事を「自分で決められない人たち」の実態を解き明かしていく。
 初顔合わせ同士が顔を合わせると、「自らをおとしめるような」卑屈な自己紹介が何人も続くというシーンをよく見かける。いかに自分が何もできないかとか、無能さをアピールする場になっていることが間々ある。考えてみれば、自分だって似たような感じの自己紹介をしてしまっている。まるで”卑屈競争”−これこそが、依存性を示す一例らしい。
 いまの日本では、自立性よりも協調性が求められることが多いし、依存性の強い親が、依存性の強い子供を育てるという「再生産」が行われていることを示す事例はたくさんある。例えば、依存性性格者の親が「子供に嫌われたくない」と思うあまり、子供に媚びるという現象などだ。

 依存性自体悪いものではないが、いまの日本で起きていることは、依存性の良い部分が消えつつあるという。「場の雰囲気や相手の意向を鋭く察知して、和気あいあいのムードを保とうと努力する」というのが依存性性格者の典型的な特徴であり、それが日本の社会の心理であったのに、最近では、そもそも調整しなければならないような相手(それが家族であっても)とは、最初から距離を置いて関わらなくなりつつある。それは、依存性性格者のプラスの面として考えられる、「自分が劣っていることを認め、すぐれた物の存在を認め、それを学んでいこうとする姿勢」が失われていることを示しているのだ。そもそも視界に入らないのだから。

 これからの日本の姿を、以下のように予測している。いずれも深刻な内容ばかりだ。

「企業は中間管理職が育たなくなる」、「引きこもりは減らない」、「しつけ大学ができる」、「英語教育を増やしても国際化は達成されない」、「新しいクリエイターの登場は困難」、「強権政治が生まれる危険性」、「自己愛性格者が増える可能性」

 自分の周囲にも思い当たる節はあるし、自分自身に当てはまることもあり、かなり考えさせられる。いまの日本、これからの日本を考えていこうとする人たちにも、ぜひ読んでもらいたい示唆に富む本だった。

(2005/5/1) 【★★★★★】 −05/5/1更新


恋の歌 歌を読む詩集あゆとサザンで学ぶ詩の世界

根本 浩/著
金の星社

1,575円(税込)
  最近の曲は、どうも歌詞がよくわからない…なんて思うのは偏見かもしれない。この本は、比較的最近の曲の中から、恋愛に関する曲をピックアップ。歌詞自体を賞できるよう大きな文字で歌詞を示し、それぞれに懇切丁寧な解説がつく。学校での教育現場に使えるようにとの配慮から、それぞれの解説の後に、練習問題がついている。
 曲は知っていても、なかなか歌詞をじっくり読む機会がないから、とても新鮮に見える。それ以上に、タイトルや歌う人の名前は知っていても、曲が思い出せないのがたくさんあって悔しい。歳を取ったんだなと思わずにはいられない。でも、ほんとに最近の曲ばかりだから、学校教材としてぜひ使ってみて欲しい。いい勉強になる一冊。
 ちなみに「あゆとサザンで学ぶ詩の世界」というサブタイトルが付いているが、彼らの歌はそれぞれ一曲だけで、誤解のないように。

収録されているタイトル
First Love(宇多田ヒカル)、瞳をとじて(平井堅)、花(ORANGE RANGE)、いとしい人(CHAMISTRY)、かたちあるもの(柴咲コウ)、BELOVED(GLAY)、Automatic(宇多田ヒカル)、桜坂(福山雅治)、幸せをありがとう(ケツメイシ)、カブトムシ(aiko)、HOWEVER (GLAY)、I LOVE YOU(尾崎豊)、Love days after tomorrow(倉木麻衣 Everything(MISIA DEPARTURES(globe Rhapsody in Blue(DA PUMP ロビンソン(スピッツ)、LOVE LOVE LOVE(Dream Come True)、いとしのエリー(サザンオールスターズ)、LOVE2000(hitomi)、ビューティフルディズ(175R)、アゲハ蝶(ポルノグラフティ)、涙そうそう(夏川りみ)、雪の華(中島美嘉)、ハナミズキ(一青窈)

(2005/5/1) 【★★★☆☆】 −05/5/1更新


破裂

久坂部 羊/著
幻冬社

1,890円(税込)
  現役の医師が医療の抱える問題点を中心に描いている小説ということもあって、リアリティがあり話に引き込まれる。いまの自分もそうだけれど、とかく自分がまだ(比較的)若くて、病院にもあまりお世話になることもなく、また身近に高齢者がいないということあって、あまり現実的に考えることができないから、こうした本であらためて現実を突きつけられると、否応なしに考えさせられる。
 医療過誤、超高齢化社会、介護問題、官僚主導政治などなど、あらゆる重要な問題を取り上げている。

 …超高齢化社会を迎えた日本は、本当に高齢者を支えていくことができるのだろうか?
 …医療技術が進んで、寿命も延びてきたけれど、本当にそれだけが幸せなことなのだろうか?
 
 この問いに対して、本書の中で衝撃的な回答が出てくる。その回答に対して、全面的に賛成する気はないけれど、それを上回る答えを思い出せないのは、ちょっと悔しい。
  医師の立場について描かれた記述の中で、印象に残った部分を引用すると…

…医療にはあらゆる不確定要素がつきまとう。命を失う罪は重い。しかし、命を救ったとき、同じだけの評価があるのか。命の賠償金が5千万円なら、救命の報償も同じにしてほしい。かけがえのない命を救ったのだから…

…患者は医師に不眠不休の働きを求め、理想ばかり押しつける。医師は命を救うものと決めつけ、それを当たり前のように言う。気楽な理想主義者どもに、現場の苦労がどれだけわかるか…


 たくさんの医師がもしかするとこのような葛藤をしているのかもしれない。
 改善の糸口は全く見えてない。それどころか悪化の一途をたどっている。よく考えていくと、かなり深刻なのに、自分も含めてあまり考えようとしない気がする。考えても解決しないのだから、何にもしないわけだ。
 題材や切り口がこれまでにない感じで、とても興味深く読んだのだけれど、どこか「白い巨塔」そっくりな部分が出てきたり、エンディングがかなり強引な感じがしたり、前作の「廃用身」と比べると、ちょっと物足りなさを感じてしまった。
(2005/5/1) 【★★★☆☆】 −05/5/1更新


遺書   へんなものすき子さん おもしろかわいい昭和の雑貨手帖
松本 人志/著
朝日新聞社

1,020円(税込)
   あまり芸能人の書いた本は読まないのだけれど、たまたま図書館の「今日返却のあった本」というコーナーで見かけたので、借りて読んでみた。
 正直、内容的にはこれがベストセラーになるとは思えないのだけれど、いかに読者が、著者の「松本人志」へ関心が高かったかということを裏付ける事象だと思う。日記というか、今で言うところのブログというか、松本人志の本音をありのまま書かれた感じ。本文中でも実際に自分ひとりで考えて書いていると言っている。テレビで見せる彼の性格を思い出しながら読むと、はぁなるほどなと思うところがあって、おもしろい。ちょっと偏見や考え方に疑問を持ってしまう部分もあるけれど、彼の日記だと思えば、気にならない。

(2005/5/1) 【★★★☆☆】 −05/5/1更新
  ふじわら かずえ/著
祥伝社

1,260円(税込)
  昭和のちょっと変わった雑貨を集めた本。全編楽しいイラストで構成されている。
 「ジェームスディーンのピーヒャラ」とか、「きせかえ」でなく首をすげ替える「くびかえあそぴ」とか、木のピースを縦や横に動かして、「娘」というピースを外に出す「娘パズル」、さまざまなこけし…「スチュワーデスこけし」「壇ふみにしか見えないこけし」「東京タワーこけし」とか、イチジク浣腸の販促品として作られたナイフとか…
 今から見ると、なんだかよくわからないモノばかりだが、作られた当時は、別に笑わそうとしたわけでもなく、いたって真面目に作っていたのだ。それだからこそ、趣があって楽しいのだと思う。
 四、五十年の違いで、日本人の発想がここまで変わってしまうというのは、ちょっと不思議。今の時代のモノが、また四、五十年先になったら、どう見られるのだろう?それはそれで楽しみ。

(2005/5/1) 【★★★☆☆】 −05/5/1更新


へんないきもの  
早川 いくお/著
小学館

1,575円(税込)
  全編イラストによる変な生き物たち大全集。一般的な動物図鑑のような生物学的な視点ではなく、とにかく物珍しい姿形や生態を、著者の軽妙な…というか人を食ったようなネタと合わせ、約60余りを紹介。
 無表情で無脊椎なチアリーダー…「キンチャクガニ」、虐待されてもマヌケ顔…「プラナリア」、世界のどん底で愛想を振りまく…「センジュナマコ」、おでんにするとお得…「多脚タコ」…など、見出しも変わっている。けれど、それはそれでちゃんと特徴を捉えているから、またおかしい。
 2004年夏の発売以来、かなり売れたと聞いているから、一般人たちが意外に変な生き物に対する感心が高いかをうかがい知ることができる。
 地球上にこんな変わった生き物がいるのかと驚かされる。一番最後が「ツチノコ」を持ってくるところなんかが、「ほんとにこんな動物がいるの?」なんて思わせるねらいがあるように思えた。

(2005/5/1) 【★★★★☆】 −05/5/1更新