生き物はどのように土にかえるのか/大園 享司

 

目の前にあるモノも、人も、もちろん、僕も、時間の差はあれど、いずれは必ず、土にかえる。

もちろん、人間の場合、日本では火葬されるから、「土にかえる」というのは、イメージしにくいが、これは紛れも無い事実だ。

そう考えると、なんだかとても不思議な気がするが、そこまで話を広げなくても、動物や植物が「土にかえる」ということは、本当は、ごくごく身近で起きていることのはずだ。

でも、意外と知られていないし、どこかちょっとタブー的な話ですらある。

本書は、そうした生き物が「土にかえる」ことをテーマに、さまざまな事例を交えて、わかりやすく紹介。

「動物が腐る」「植物が腐る」「腐るか腐らぬか、それが問題だ」の大きく3章にわかれ、生き物がどのように土にかえっていくのかについて、詳細な説明をしていく。

まず、1章の「動物が腐る」では、冒頭で、アフリカゾウが「土にかえっていく」詳細な過程を紹介している。

想像すると、けっこう気味の悪い光景だが、これはリアルな写真などはないから大丈夫。

分解には「遺体の膨張」、「湿潤な遺体の活発な分解」、「遺体の乾燥」という大きく3つの段階があって、それらのプロセスを経て、土にかえっていく。

そして、土にかえるのに一番大きな影響を与えるのは、温度だが、遺体の置かれた環境に大きく左右されるため、どれくらいの時間で土にかえるのかという問いには、一概に答えられないという。

また、分解の過程のなかで出現する、ハエなどの昆虫を意図的の除去すると、分解が進まなくなるというエピソードは、興味深い。

いかに分解が実はさまざまなバランスの上に成り立つ、デリケートな事象なのかもしれない。

こうした事象を利用して「法医昆虫学」という研究があるという。

動物が分解されていく過程で出現する昆虫の種類や発育の状態によって、死後の経過時間が推定できる。

ハエは、死後数分以内に遺体を探し当て飛んでくるという。

クロバエは、わずか1日で幼虫になるため、現場の温度さえわかれば、死後の経過時間を正確に知ることができる。

このため、古くから犯罪捜査に役立っていたそうだ。

2章の「植物が腐る」は、動物とはまた違った考え方が必要になることが紹介される。

落ち葉は「植物の遺体」という紹介も、言われてみれば、確かにそうだ。

でも、樹木の本体である幹や枝が枯れて死んだわけではないので、動物とはちょっと別に考える必要があるとか、言われてみると…みたいな話が次々と出てくる。

また、落ち葉が腐葉土になる時間というのも、一概には言えないというのは、動物が土にかえる時間がわからないのと同じだ。

定義もあいまいだし、葉っぱの種類によっても大きく違う。

結論を言うと、早ければ数ヶ月、長いと1000年経ってもなくならない場合があるということに。

3章の「腐るか腐らぬか、それが問題だ」は、動植物以外の家屋や丸太、きのこの分解、南極や熱帯といった特殊な環境での分解など、著者の経験を交えて紹介されている。

読みやすいのだけど、盛りだくさん。

読みながら、気になったことを検索したりするから、読み進めるのに意外と時間が掛かってしまう。

これは決して悪い意味ではなく、むしろ、知的好奇心をくすぐられた結果だ。

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