誰がアパレルを殺すのか/杉原 淳一 染原 睦美

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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一 染原 睦美
日経BP社 2017-05-25

by G-Tools , 2017/09/03

 

ニュースなどで、アパレル業界の不振をよく聞く。

売れているのは、ユニクロなどに代表される、いわゆる”ファストファッション”ばかりで、かつての”ブランド”は、非常に苦しい状況のようだ。

特に業界関係者でもなく、ファッションに関心が高いわけでもないのだけど、そういった状況については見聞きしていたから、ちょっと気になってはいた。

本書は、自分のような部外者でも理解できるよう、アパレル業界の歴史や、問題などをわかりやすく解説している。

現在のような状況になってしまった、理由はいろいろある。

かつて、1970年代のアパレル産業は、洋服は作れば作るだけ売れた時代だった。

それが、この20年で3分の2、15.3兆円から10.5兆円へ縮小し、単価も下がっていった。

その一方、SPA(製造小売業)が台頭してくる。

アパレル産業の川上から川下までの情報を正確に把握し、サプライチェーン全体を合理的に管理している。

消費者のニーズを捉えて、中国などで大量生産するビジネスモデルだ。

大手アパレルは、かつての成功体験が足かせとなって、自らを変えることができなかった。

SPAの表面的な部分だけを取り込む形で、製造拠点を中国に移し製造コストを抑えただけだった。

売れない商品があふれ返ったが、ちょうど続々と作られたショッピングセンターやアウトレットモールなどが受け皿となったのだ。

そして、不良在庫を引き受けるバッタ屋が出現する。

その間、大量の商品を作るために、大手アパレルが委託したOEMメーカー
に対して、「売れ筋を、安く、早く」を要求し続け、いつしか商品企画やコンセプトまでも外部へ丸投げするに至る。

「アパレル企業の実態は、商社やOEMメーカーが提案する完成品を運ぶだけの疑似セレクトショップ」p.39

「売れ筋を作る」から「売れ筋を追いかける」ことに…。

ゾゾタウンに代表される通販の興隆、オンリーワンを目指す新興アパレルメーカーなどの紹介。

無駄が多かったぶん、成長の余地が残されていると考えている関係者も多いのだろう。

業界の当事者ではなく、外部の目で見ると気づくことも多いはずだ。

業界の専門家や、百貨店社長、ユニクロの柳井氏へのインタビューを見ると、この業界の危機感が伝わってくるとともに、次への方策も見えてくる。

一方、本文中では、やたらと大手アパレル幹部の匿名でのコメントがあったのに、こうしたインタビューやコメントでは実名がほとんど挙がってないことが気になった。

これは、大手アパレルの先行きが、まだまだ不透明であることの証なんだろうと思った。

とても読み応えがあった。

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