なぜ「あの場所」は犯罪を引き寄せるのか/小宮 信夫

 

犯罪や防犯を語るときに登場する「不審者」という言葉…どうやら、これは日本独特の表現らしい。

日本では、犯罪は「人」が起こすものだから「犯罪者」に注目するが、諸外国では、犯罪は「機会」がないと実行されないと考え、「場所」に注目するらしい。

前者を「犯罪原因論」、後者を「犯罪機会論」という。

著者は、前者に偏りがちな考え方をあらため、後者をもっと考えるべきと解く。

日本では、犯罪原因論を元に犯罪を考えるために、犯罪を起こす恐れのある「不審者」ということを常に意識する。

では、そもそも、不審者とは一体なんだろうか?

ベタな不審者像としてよくイラスト等に載っているマスクやサングラスをしていたらそれだけで不審者か?

結局、外見だけで判断するしかなくなり、小さな子供たちにとっては、わかりやすい外見上の違い…たとえば、外国人、知的障害者、ホームレスといった人たちが、「不審者」として定義されてしまう。

そもそも、犯罪を犯そうとしている人が、最初から疑われるような姿になるだろうか?

子供たちに対して、「不審者には気をつけろ」に加えて、「知らない人にはついていくな」と言った指導もよくある。

でも、これだって実はおかしい。

子供たちにとっては、言葉をかわすだけ、何度か顔を見かければ、それだけで、「知ってる人」となってしまう。

むしろ犯罪者は、「優しい人」「立派な大人」を演じて、子供たちに近づき、犯罪に巻き込まれたという感覚を感じさせないのだ。

だから、著者は、こう主張するのだ。

「人」はウソをつく。「景色」はウソをつかない。

犯罪者は犯罪が成功しそうな場所でしか犯罪を行わない。

だから簡単には捕まらない。捕まるのは、捕まる場所で犯罪をしたごく一部だ。

よく捕まった容疑者が言う台詞に、「だれでもよかった」というのはあるが、犯行現場は「どこでもよかった」ということはないという指摘は、なるほどと思った。

そこで、犯罪を未然に防ぐ方法として挙げられているのが、「ホットスポット・パトロール」と言われるものだ。

これは、入りやすく見えにくい場所を狙い撃ちしたパトロールのことで、人気のない駐車場や空き地など、たとえば、空き巣が車を置いて、そこから家を物色しに行こうとするような、いわば”犯罪者の作戦本部”となり得る場所を重点的にパトロールすることで、犯罪者にプレッシャーを与えることができるのだという。

昨今の凶悪犯罪を見ていると、不審者だけを中心に犯罪防止を考えることには、そろそろ限界がきている感じはする。

どちらか一方というのではなく、バランスを取った犯罪対策を考える時期に来ているのかもしれない。

これまであまり考えたことのない切り口だったから、とても興味深かった。

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