東京総合指令室/川辺 謙一

もうすぐ、JRグループのダイヤ改正が実施され、首都圏では、北陸新幹線や上野東京ラインの開通など、比較的規模の大きな変化が起きそうだ。

この改正の日に、おそらく、一番緊張するのが、JR東日本の東京圏における輸送を管理する、JR東日本の東京総合司令室かもしれない。

ふだんは、障害が発生したときに、もっとも重要な役割を果たしていて、電光掲示版や運行案内のモニターなどに表示される情報は、すべて東京総合司令室とそれを支える、東京圏輸送管理システム(通称ATOS(アトス):Autonomous decentralized Transport Operation control System)によるものだ。

本書の舞台となっている東京総合司令室は、東京体育館のメインアリーナより広く、休憩室や訓練室も含めると東京ドームのグラウンドよりも広いという。

業務の性格上、ここに詰める人たちの中心は、中年以上の大ベテラン?と思いきや、20歳代〜30歳代が中心で、平均年齢は30歳代前半という。

国鉄が分割民営化するころに人員の採用を控えたため、偏りが見られるそうだ。

途中休憩や仮眠があるものの、出社から退社まで24時間連続勤務という特殊な体系となっていることから、相応の体力も必要になるのかもしれない。

ここでは管理する地域(路線)を分けた5つと、施設(駅等)、信号通信、給電(発電所〜変電所)、電力(変電所〜架線)の、計9つのブロックに分かれて管理されている。

ちなみに、地域(路線)の5つとは、東海道、中央、東北、常磐、そしてE電と分かれている。

E電…一般的には、もはや死語と化してるが、ここでは、山手線・京浜東北線・埼京線等を指すブロックの名称として使われていた。

セキュリティーの都合上、指令室内の様子は写真ではなく、イメージイラストになっているのも興味深い。

本書を読んでいて、一番印象的だったのは、IT技術の進歩が、膨大な本数の列車の運行を支える力になっていることは間違いないが、それよりも、最終的には、機械ではなく、やはり、人の力で大部分の仕事をこなしている(p.106)ということだった。

飛行機やバスといった交通機関に比べると、鉄道は遅延に対する要求レベルが異常に高い。

数分程度遅れても「お詫び」の放送が出ることからも、それがわかる。

それは、日本人の鉄道に対する期待が、半端なく大きいからだ。

国鉄時代と比べたら、はるかに改善した今でも、苦情や批判が寄せられるそうだが、そういう意味では、改善にゴールはない…ということだろう。

古くは新小平駅での武蔵野線水没事故や、まだ記憶に新しい昨年の有楽町駅近くで発生した火災などのトラブルが発生したとき、その裏側の東京総合司令室が、どういった対処をしたか詳しく紹介されている。

IT化が進む前の司令室は、今とは比べものにならないほど情報が不足していたなど、興味深いエピソードが盛りだくさん。

マジックの種明かしじゃないが、ふだんは絶対見られない様子や背景を知ることができて、とても楽しかった。

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