世界中が雨だったら/市川 拓司

■文学・評論, 龍的図書館

4104767018 世界中が雨だったら
市川 拓司

新潮社 2005-06-29
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 相変わらずベストセラーを読まない僕ですが、今回もこの著者の大出世作である「いま、会いにゆきます」は見てない。本書は「愛」というものをテーマとした3つの短編で構成されている。

 どれも「愛」が共通しているにもかかわらず、環境によって愛が似ても似つかぬ姿に変わっているということを見せつけられる。全然美しくもなく、きれいでもなんでもない。他に代わる言葉がないから「愛」という言葉で代用しているだけなのかもしれない。

 物語に登場する人たちの立場だったら、おそらくぼくも同じような行動をしてしまうんじゃないかという現実感が、この物語を一層リアルなものにさせている。どうしようもない状況に置かれたときの閉塞感には、息が詰まりそうになった。

 特に「世界中が雨だったら」という話は、読み進めていくうちに涙があふれてきた。
 なお、この話は著者のインターネットサイトで公開されていたものを加筆修正されたようだが、もともとのタイトルは「ぼくを殺したみんなへ」だった。ネタばれになるのでこれ以上細かいことは書かないけど、今のタイトルの方がずっといいと思った。

(2005/10/16) 【★★★★☆】 -05/10/16更新