龍的思考回路 メニュー
はじめての方へ 定点観察…このサイトのメインページです 書店…これまでに読んだ本を紹介します 旅行…見たこと、感じたことをまとめてます 交通…鉄道を中心に交通関係の話題 建築…心に残る特徴的な建物を紹介 社会科見学…好奇心を満たされに出掛けよう ダミー…龍的思考回路のキャラクター いろいろ…その名の通り、いろいろ 地図索引…地図からこのサイトを検索 お問合わせ…何かありましたらお気軽に 鯉降渓谷鉄道…75cm×40cmのNゲージ鉄道模型 はじめての方へ 定点観察 書店 旅行 交通 建築 社会科見学 ダミー いろいろ お問合わせ 龍的思考回路

建築


中銀カプセルタワービル

なかぎんかぷせるたわーびる/東京都中央区銀座

建物情報

設計
黒川紀章/黒川紀章都市計画事務所
所在地
東京都中央区銀座8-16-10
用途
集合住宅
建築面積、延床面積
429.51m2、3,091.23m2
構造
鉄骨鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造
竣工
1972年
最寄駅
汐留
リンク
建築マップ
黒川紀章設計事務所
グッドフルインターネットマガジン
作成日/最終更新日
2002年5月28日/2004年11月24日

 再開発が完成しつつある汐留"シオサイト"のすぐ近くにある、時間が止まったようなビルをご存知だろうか?なぜかその存在が、僕の関心を惹きつけてやまない・・・その建物は、中銀カプセルタワーという。

 新橋駅から歩いて数分。交差点の位置と、目の前を首都高速が通る関係で、周囲に高い建物が多いが、目指す建物は遠くからでも簡単に見つけることができる。



 1階部分は、ごく普通のコンビニになっている。ただ、全体的に天井が低くて、ちょっと古い感じは否めない。コンビニに続き、エントランス、数台の自動販売機が並ぶ。




 見上げてみると、この建物がかなり特殊な存在であることに気づかされる。ブロックのようなまったく同じ形、大きさをしたたくさんの箱が、天高く積み上げられている。箱の一つ一つに丸い窓があって、その窓からは、書類のような紙切れや、ちぎれかかったカーテンなどが見える。生活感がまるで見られないこの建物は、いったいなんだろう。



 入口には、「中銀カプセルタワービル」と書かれ、これらのブロック状の箱の一つ一つが、カプセルと呼ばれるもので、このカプセルというものが、このビルのアイデンティティなのだということがわかる。
 1階には、カプセルのサンプルが置かれている。
 少しの間、このビルの前で写真を撮っていたら、何人もの人がサンプルのカプセルを覗き込んでいた。やはり、この建物に関心のある人は少なくないようだ。
  サンプルのカプセルを覗き込む。

チャンネル!

 カプセルの中身が狭いのは想像通りだけれど、内部の什器が作られた当時のまま残っていることが、ある種のショックというか、感動というか、不思議な感覚を起こさせた。テレビをよく見ると、チャンネルを"ひねる"とか"まわす"という、あまりに懐かしいタイプ。いまの子供たちは知らないだろうな。
 トイレ、ベッド、エアコンらしき管も見えるし、電話もテレビもある。"ちょっとの間"であれば、この中で過ごすには、過不足ない。ただ、過ごすのはちょっとの間だけ。もし、この中で何日も過ごせということだと、相当気が滅入りそう。
 でも、しばらく見ているうちに、なんかどこかで見たことがあるような気がしてきた・・・そう。カプセルホテルと大して変わらないのだ。台所や収納がほとんどないところなんかも、カプセルホテルと同じ・・・生活感のなさはこういうところから表れるのかな? ※1

カプセルとは「ホモ・サーベンス」のための住いである。
黒川紀章
〜 サンプルカプセルから原文のまま転載 〜

EXPO'70において
建築学会に大きな波紋を
投げかけたカプセル住宅。
中銀では、21世紀の住宅形体は
これだ。
その結論に達し経済工期、経済工費
を追求して当カプセル住宅を商品
化。世界でも初めてのカプセルマン
シオンをここに実現しました。
(昭和47年3月完成)
プレハブ住宅の進歩に従がい
現場生産中心の住宅形体も、昨今、工場
生産部分が非常に多くなってきつつ
あります。
中銀の当カプセル住宅は100%工場生
産され、現場では取付(プラグイン)
作業だけをするという画期的なもの
でした。
これは正にカプセル住宅時代の
幕明きと言っても過言では
ないでしょう。


 このビルが建てられた1970年代。おそらくこのビルは、近未来の象徴のような存在だったのかもしれない。そんな自負が、上記の文章から読み取れる。建築家黒川記章氏にとっても、自分の理想というか考えを思いっきりぶつけた作品だったのだろう。

 「21世紀の住宅形体はこれだ」と言い切ってるが、21世紀になったいま、この建物が、まさに、20世紀の象徴のように思えてしまうのが、ちょっと皮肉な感じがする。

 カプセルタワーの目の前には、まさに21世紀のビルを代表するかのように、汐留再開発のビルが立ちはだかっていた。カプセルタワーには、この風景がどのように映っているのだろうか。




カプセルタワーとダミー


 こうした巨大な建物とダミーを一緒に撮る場合は、建物全体を背景にして手前にダミーを置くか、建物の特徴的なところだけをアップにして、それに合わせてダミーを置くか…と構図に悩む。
 今回のカプセルタワーでは、1階にカプセルの見本が置いてあるので、その窓の上に乗せてみた。たまたま窓の後ろに説明用の板が無造作に置かれていたこともあって、その前に立たせたダミーが引き立って見えている。
 この前の道は、そんなに人通りが多くはないのに、この窓からカプセル内部を覗き込む人が結構いる。だから、ダミーをこの窓枠に置いてカプセル全体が入るところまで引いて全体が撮るタイミングが難しかった。


2002/05/04、28